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繋がる記憶

2015年11月07日 12:00

20151107
◆ 13日目 ◆

ダイニングルームのような場所にマットレスを敷き、

寝袋の中に入って寝ていたら、

もの凄い大きな音でガーとなった。

起きると、誰かがコインを入れるタイプの

コーヒーマシーンを使っていた。

私は目が覚めてしまった。

巡礼を止めたので寝不足ぎみでも構わないけれど、

朝早すぎる時間帯に目が覚めてしまった。

まだ外は暗い。

今日も歩く巡礼者達には、この音は厳しいのではと思った。



次から次へ起きてくる出発したい巡礼者達は、

そのコーヒーマシーンを止めることなく使っていた。

掃除機のような音量でずーと鳴り続けていた。

「音を止めて!まだ寝てるんだから!!」

やっぱり寝ている巡礼者達は注意していた。

しかし、目の覚めた巡礼者達は変わらず、

コーヒーマシーンを使っていた。

日本だったら気を使い、これは使わないだろう。

ここでは自分のことしか考えないのが当たり前だった。



荷物をまとめた巡礼者達は外の扉を開けっ放しにして、

音を気にせず出入りを繰り返した。

外の風が部屋に入りブルっと震えた。

寝袋に入っていても寒い。

私はそのまま人間観察し続けた。

「ちょっと!寝てるのに何で扉開けたままなの!!」
「ここで寝ている人だっているんだよ!」

デンマークの男の子が起きてきて、

私を不憫に思ったので注意してくれた。

私は観察を楽しんでいて注意できなかったことを申し訳なく思った。

私は何も彼に言えなかった。



私はこれから出発する巡礼者達に嫌な気持ちで

出発して欲しくなかった。

昨日会った怒りながら歩く人を思い出した。

外に出た音を立てていた巡礼者達の所に行って、

私が歩けない巡礼道を楽しんでという意味を込めて

「エンジョイ ブエンカミーノ」と送り出した。

彼らは手を振ってまだ暗い道を進んで行く。

空を見上げると沢山の星が輝いて美しい。

今見える世界は美しい!



私は寝袋に戻りタクシーが来る8時までじっとしていた。

時間が近づきまだ寝ている巡礼者を起こさないよう準備をした。

8時前に外に出るとタクシーが既に待っていた。

私は慌てて荷物をまとめてタクシーに乗った。

英語が通じない運転手さんだ。

乗って気が付いた。

私の寝てたマットレスを片付けていない。

彼らに「さよなら」って言ってない。

タクシーは無言のまま出発していた。



外は太陽が昇って明るくなりはじめている。

朝の光は美しく私を喜んで送りだしているようだ。

車の中から写真を撮っていたら、

町が見下ろせる景色の良い場所で

運転手さんが車を止めてくれた。



私は涙が止まらなくなった。

巡礼を出発した時の気持ち、

巡礼中の様々な気持ちの変化と体験、出会い、別れ、

振り返ると感謝することばかりだった。

私の心を出会った人達の思い出が温かく包んでくれている。

不思議な体験が1つの線で今のこの瞬間に繋がったように感じる。



気付くと隣で無口の運転手さんが泣いていた。

何も話していないのに、私の気持ちを理解したように。

私達は一緒に泣いていた。

涙が止まらなくなった。

涙を拭きながら外の景色を眺め、私達は駅まで着いた。

私は運転手さんに25ユーロを渡すと

彼は「ブエンカミーノ」と言って別れた。

彼は見えなくなるまで手を振り続けてくれた。


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