FC2ブログ

3匹の犬

2015年11月02日 20:05

20151104

少し坂道のある民家が並ぶ道に入った。

飼われている犬は相変わらず私に吠えている。

これから先へ進む巡礼者を阻むように

吠え続けているように感じる。

庭の柵を超えて飛び出てくるのではないかと思った。



私は柵から飛び出し噛みつかれるのではないかと

恐怖で胸に手を当て、

「私は噛まれない。自分を信じる」と心で唱えた。

すると、なぜか犬は吠えるのを止める。

あれ?気持ちが通じてるの?



そのまま私は他の家々で吠える犬とも目を合わせないで、

「信じる」と唱えながら小道を進んだ。



そのまま歩き続けると、

長く続く坂道が見えてきた。

時間は既に4時を過ぎている。

スペインでは9時半を過ぎると

暗くなり始めるので心配な気持ちになる。



このまま山に入ってしまうと2,3時間は歩き続けなければ、

次の町はないだろう。

ここはいったいどこだ?

今どこに私はいるの?



今朝の山登りの経験が私の足を重たくする。

長く長く続く坂道である。

私は道に座り込み考えた。



海岸沿いに戻って宿をみつけるか?

この山を自分を信じて登るか?

次の町があるのか分からない。

また、ここの町がどこだかも分からない。



自分が今どこにいて、

どこに向かっているのかが分からなくなり、

悲しくなった。



道に座り込み泣きはじめた所で、

高級車を乗った若者の車が私の前を通った。

私は慌ててその高級車を止め、

距離の書かれた案内を彼に見せた。



「今私はどこですか?」と尋ねると、

彼は「ここにはないよ」と答えた。

私は彼に救って欲しい気持ちと混乱で少しパニックになった。



「すみません。巡礼の道は合っていますか?」

「次の町まで何時間掛かりますか?」

「私をこの車で近くの町または駅まで連れて行ってくれませんか?」



立て続けに私は質問をしていた。

彼は驚いた顔をして、私の身なりをチェックして答える。



「巡礼の道を知りません。巡礼も」

「ノーエンティエンド(英語分かりません)」



と明らかに私を車に乗せたくはない表情だ。



当然だよね。。。

私は諦めてまた道に座った。

高級車は私を助けてくれるために現れた訳ではなかった。

涙が出てくる。



私は次に車が通ったら、車に乗せてくれるかを聞こう。

乗せてくれなかったら諦め、山に向けて進もうと決めた。

今度は普通の乗用車が通った。



私は車を止めて話掛けた。

今度は優しく落ち着いて話そう。



車に乗っていたおじさんは英語が本当に理解することができず

「ノー」とだけ答えた。



涙を我慢し、私は重たい足に言い聞かせ、

坂を上り始め動きだした。



長く続く坂道を上り、

山に入る途中のワイン畑の所有者であろう大きな家のお庭で、

高級車から降りてきた夫婦を見かけた。

彼らは私を心配そうな目で見ている。

怪しいと思っているのか?

心配してくれているのだろうか?



私を指さしているので、私の話をしているのだろう。

私は登ると決めたので彼らに話し掛けずに進んだ。

2人が私を止めてくれたらいいのにな~。



とうとう私は1人で山の中に入ってしまったようだ。

歩いても家も人もいない。

スピリチュアルな道に入ってから、

巡礼者に全く会ってもいない。



早く山を抜けたい気持ちで小走りで登る。

すると、山道の先の遠くを犬が歩いているのが見える。

私は家があるのかなと思った。

家が会ったら嬉しい。

人がいてくれたらもっと嬉しい。




しかし、家らしい建物は無い。見当たらない。

私は犬がウロウロしているその道を

通らなければいけないので、犬の方に進んだ。



犬は1匹ではなく、3匹いる。

何で?犬がいるの?

どこから来たのよ?



私はまた吠えられると直観で思ったとたんに、

その3匹が私の周りに集まってきた。

いやー。



3匹の犬に囲まれ吠えられた。

やっぱり吠えられた。



恐怖で私は後ろに戻ったけれどもう遅い。



怖くてどうしていいのか分からなくなりパニックになる。



3匹同時に吠えて囲まれた。



いやー。噛まないでー。



私はさっき犬が吠えなくなった時と同じように、

とっさに胸に手を当て

「自分を信じる。信じる。信じる」と

呪文のように唱えた。



私は恐怖で目を閉じ、呪文と共に歩き進める。

恐怖で目を開けられない。



囲まれていた犬に襲われ噛まれるかもしれない恐怖と、

犬にぶつかってしまい、もっと犬が怒るのではないかとも思った。



数メートル進んでから犬の吠える声が聞こえなくなった。

どこだー犬はー?



私は振り返るのが怖かったので、

呪文を唱えながらそのまま進む。



また数メートル進んで深呼吸をしながら、

後ろを振り返った。



さっきまで吠えてた犬は1匹もいなくなっていた。

あれ?そんなに歩いてない?

犬が見えない?

引き潮の海

2015年11月02日 20:04

20151102-3

歩いてる人達に巡礼道を聞いてみたが、

相変わらず答えは「知らない」だった。

雨が止んでいることだけが救いだと思える。



そのまま歩き続けていると、海が見えてきた。

今までの海とは違い、

引き潮で海面が遠くの方にやっと見える。



初めて歩いていることを無意味に思った。

道路沿いを歩くように黄色い矢印が指していれば、

遠回りせずにすんだのに、わざわざ海岸を歩かせる。



また、私の感情も「海だ!」と喜べない。

「海はもういいので、安心できる道が欲しい」と

心で叫んでいた。

「海岸沿いになぜ矢印を付けたんだ?」
「ただ歩かせたいだけだと思う」
「私は観光したい訳じゃないんだよ。」



新しく付けられたであろうペンキの黄色い矢印は、

私をイライラさせた。



海岸を過ぎたと思ったら、

同じような家の周りをぐるぐると周って歩く。

巡礼者のような2人組はいるけれど、

リュックを持っていない。

この道で合っているかどうかを聞こうと思ったけれど、

この2人にイライラで疲れた気持ちのまま聞けなかった。



足は浮腫み、膝下はかぶれている。

ギョサンを履いている足も疲れを感じている。



海岸沿いを歩く道の終わりが分かった所で、

靴に履き替えた。

まだ湿った状態の靴だから、

新しい靴下を2枚重ねて履こう。。

これから次への町へは、

きっともっと時間が掛かるだろうな。。。

スピリチュアルな道

2015年11月02日 17:33

20151102-2

スピリチュアルな道を選んで良かったのかなー。。

まだ迷いながら歩いていた。

巡礼者に会っていれば「間違っていない!」と

安心するけれど、人が誰もいない。



お昼を過ぎている時間なのに、

地元の人は歩いていない。

今までの道でも放し飼いの犬はよく歩いていた。

飼い主が近くにいたからだろうか、

放し飼いの犬は近くを歩いても、吠えなかった。



しかし、このスピリチュアルな道に入ってから、

犬によく吠えられるようになった。

家の庭で飼われている犬も吠えてくる。

なぜだろう。。



田舎の道というような民家がある道を過ぎた後、

黄色の矢印を疑うようになった。



「本当にこの道で合ってるの??」と声に出るほど、

歩く道の無いような道を指している。

誰も歩いていないからだろう。

木や葉が行く手を阻むように茂っていた。

「スピリチュアルな道だから?」



人や家、お店もないので進むしかない。

膝下がかぶれたように赤くなっていた。

何かの葉っぱに触れたからだと思う。

痛くてかゆい。

ギョサンは歩きにくいけど、

靴が濡れているので仕方がない。



朝から歩き続けているけれど、

地図がないので今どこを歩いているのか分からない。

黄色の矢印は続いているのに、巡礼者にも会わない。

途中、持ってきたスナックを食べて休んでいたけれど、

後ろからも巡礼者が来ない。

他の巡礼者は伝統的な古い道を選んでいるのだろうか?



道ではない道の林を超えると、

道路にでてきた。

お洒落な家や古い教会がある。



人が何人か歩いていたので、駈け寄り

「この道は巡礼者が歩く道ですか?」

「サンティアゴはこっちですか?」と聞いた。

彼らは「巡礼道を知らない」と答る。

今までは巡礼道の話をしなくても、

私のようなリュックを持っていると地元の人が声を掛けてくれた。



今までとは雰囲気が違う。

「道が間違っているのかもしれない」と焦りが出てきた。



地図は持っていないけれど、

サンティアゴ・デ・コンポステーラまでの

距離が書かれた案内は持っていた。

その案内を持って、バーを訪ねた。



男性の店員さんに聞いてみよう。

「私は今日中にパドロンに行きたいです。」
「サンティアゴ・デ・コンポステーラまでの道はこっちですか?」
「巡礼道を知っていますか?」



店員さんとお店にいたお客さんが私の所に集まってきた。

そして皆が「知らないなー。パドロンは遠いよ」と言う。



外からバイクのヘルメットを持ったお客さんが入ってきて、

「黄色の矢印を見たことある。あっちを指していたよ。

巡礼道の道か知らないけど」と言う。

巡礼道をこの町の人達は知らない???



皆は私を見て不思議そうな顔をしている。

本当に歩いてるのか?というような目だ。

私はお水を買える場所が今後は無いかもしれないので、

大きいボトルのお水を買ってリュックに入れた。



「ここポンテベドラだけど、今日中にパドロンに行くには、

車を使わないと行けないよ」と真剣な顔で説明された。



昨日泊った宿があるレドンデラからポンテべドラまで

約25kmぐらいは歩いてきた自信はある。

だからあと30kmぐらいでパドロンに着くと考えていた。



しかし、分岐点の2つの黄色の矢印に出会った地点で、

全く自分がどこにいるのか分からなくなっている。



距離が書かれた案内をお店の人にもう1度見せ、

「今私がいる地点を丸で印付けてくれませんか?」と

ペンを渡し聞いた。

彼らは声を合わせたように

「この案内の図には町が載っていないよ」と

呆れた顔で私に言う。

ここで出た答えが私をより不安定にさせる。



「どうしよう。困った。きっと間違っているこの道は」



私はお店の人達にお礼を言って出た。

少しだけ希望を持とう。

もしかしたら、このお店の人達だけが知らないのかもしれない。

もう少し道を進んでから、巡礼の道を他の人に聞いてみよう。

歩いてきた距離と黄色の矢印が今もなお目の前現れているのを信じて、

歩き進むことを決めた。

きっと誰かが知っているはず。。

伝統的な道とスピリチュアルな道

2015年11月02日 16:48

20151102-1

小雨が再び降り始めた。

しばらく人を見かけないで歩き続けている。

グループの巡礼者は1つ前の町に泊まってしまったのか、

全く巡礼者達に会わない。

歩いていれば、前に人がいるだろう。



左は森があり、右に大きな高い塀がある道に入った。

足元の道は砂利道で車が通れる広さがある。

遠くで車の走る音だけが聞こえる。

1人で歩いてることで不安がまたやってきた。



巡礼者が全くいないのはおかしい。
道間違えたのかな?
ここで襲われたら誰もいなし助けてもらえない。
少し薄暗い天気になって怖い。
いつまでこの道の風景なのだろう。。



先の方まで見通せる1本道の先から

走ってくる人がいた。

マラソンをしているのだろうか?

近くに来て男性だと分かった。

あの人こんな道でマラソン?

もしスリだったらどうしよう。。。

私の頭の中は変な妄想でいっぱいだ。

男性はそのまま何事もなく私の横を走り去って行った。

やっぱりマラソンだったのね。。良かった。



再び1人になる。

まだ景色は変わらない。

高い塀が私を圧迫するような気持ちにさせる。



1台の白い乗用車が止まっているのが見える。

こんな場所に車が何で止まっているのかな?

もし、巡礼者を狙った盗賊だったらどうしよう。

巡礼者を襲うために車が止まってるのかな?



昨日の夜に体験したナンパの車のことや、

朝、宿のお兄さんに言われた不安なことを思い出す。

私は怖くなり、その車に近づくのをためらう。

この道しかないし。。。



さっきのマラソンをしている人に戻ってきて欲しい。と

思いながら、恐る恐るその車の止まってる方に歩く。



白い乗用車を止めた男性が湧水を汲んでいるのが見えた。

男性はこっちをじーっと見ている。

私は横を通り過ぎる時、

昨日の夜の車にしたことと同じように距離を取って警戒した。

胸が激しくドキドキする。

小走りになり私は追い越した。

直ぐに振り返り目が合ったらまずいと思ったので、

しばらく歩いてから振り返った。



白い車は動き出し、こっちの方に進んできた。

なぜ?

ヤバイ!と思ったので私は走った。

逃げないと!!



再び後ろを振り返ると、

車はUターンをして後ろの方向に

進んで去って行っていた。



私の恐怖の妄想とダッシュで私は胸が苦しくなった。




そのままドキドキが止まらない胸で小走りになり、

この道を進んだ。



やっと高い塀のない道に出る。

しかし、右と左をそれぞれ指した黄色い矢印が2つある。

今までとは違い、スペイン語で書かれた標識もある。

右の矢印には伝統的な古い道、

左の矢印にはスピリチュアル道と書かれてるようだ。

私は地図を持っていないのでこの意味が分からない。



人が来るのを休みながら待つことにした。

車は左右の道を時々通るが、止まらない。

5分経っても人は小雨で誰も現れない。

今までは道を教えてくれる人が必ず現れたのに今回はいない。



どうしていいのか迷い、心の中でつぶやいた。

「次の車が進む方向の道に進もう」

直ぐに車は現れた。

車は右から左に進んだ。

スピリチュアルな道だ。

人は心で繋がる

2015年11月02日 14:19

20151102

山道を抜け、お店の並ぶ道に出た。

足の痛みがひどく歩けなくなってきている。

テラス席のあるカフェで着替えと食事を取ることにした。



温かいコーヒーと大きなフランスパンの間に

ハムだけが挟まれたサンドイッチを注文。



お店の人にトイレを貸してもらい、

濡れたカッパをたたみ、靴下を脱いだ。

足の指は長時間お風呂に入った後のように、

白くしわしわになっている。

足にまめもできて、潰れかかっている。



新しく靴下を履いても、

靴がズブ濡れのままで、また靴下が濡れてしまう。

靴が直ぐに乾くような天気でもない。

私は持ってきていたビーチサンダルに履き替えて、

濡れた靴を靴ひもでリュックにくくり付けた。

ここから先はギョサン(ビーチサンダル)で歩こう。



少し食べてから進もうと思っていたが、

30cmぐらいの長さがあるサンドイッチは

想像していた以上に美味しく、

味わいながら食べ終わってしまった。



食べている間にグループで歩く巡礼者達が、

私の目の前を何組も過ぎて行く。

雨が止んだからなのか、

この町に泊まっていたのか分からないけれど、

巡礼者の数か増えている。



休憩を取りエネルギーも取り戻した。

今なら安心してこの先の道を歩こうと思える。



ギョサンで再び歩きはじめると、

「ブエンカミーノ」と挨拶を掛けられるようになった。

フレンドリーな巡礼者達のグループが、

「さっきも会ったチャイナ(中国人)だね」と会う度に手を振ってくれる。

私はそのまま呼ばれ続けても良かったけれど、

折角だから「日本人ですよ」と教えた。



アジア人=中国人と思われることはどこの国に行っても同じである。

日本人の良さを笑顔で伝えよう。



巡礼者にも色々な人がいることに気づく。

自分の希望でもないのに歩かされてる学生集団
子供やお年寄り
義足で歩いている人
松葉づえで歩いている人
お祈りのようなことをしながら歩く人
怒りながら歩く人
音楽を聴きながら弾むように歩く人
家族のように声を掛けてくれる人



町の人達も巡礼者に優しくしてくれることが多い。

人に会うと元気がもらえ、

私の足の指の痛みも落ち着いている。

人は会うだけで心が繋がり助けられているようだ。